以前、介護のスタッフとして、様態の悪くなったお客様(利用者)を連れて病院に行った時なのですが、「延命はどうしますか?」と医師から尋ねられたことがあります。
いやいや家族でもないし、そんなん答えられるわけないじゃないですか。死んでしまったら稼ぎのネタが減るので困りますので、延命してください、と答えたいところではありましたが。まあ、答える立場にはありません。
家族などいなくて、一刻を争う場合で、本人の意思を確認できない場合、医者も困りますね。
臓器提供の意思カードというのはありますけど、延命の意思を示すのはまだ一般的ではありません。
アメリカで、29歳のがん末期の女性が安楽死を選んだということで話題になりましたが、日本では安楽死はありません。延命治療を行うか、行わないか、選べるタイミングは、生死をさまよったその瞬間だけです。そして、延命措置を選んでしまったら、もう自分の意志で死を選ぶことはできないんです。
薬漬け、チューブだらけになっても肉体の限界がやってくるまで生き続けるしかないのです。現在の医療技術は高く、生命反応を持続させ続けることが可能です。isp細胞の技術が進化していけば、そのうち不老不死の肉体にできるんじゃないでしょうか。途中でやめたら、医者が殺人罪になります。
人工透析の人も、最後はすごく苦しくて、介護タクシーでお迎えに行った時に、「もういかない、死んでもいい」と何度言われたことか。本人の意志より人命尊重ですので、無理矢理でも連れて行きます。こちらもプロですから、連れて行けるんです。いいことをしているんだか、悪いことをしているんだか、わからなくなります。長年やってると慣れてしまいますけど。
延命するかしないかの選択。本人以上に家族は難しいでしょうね。生き続けることがどれだけ苦難になるか、その時には想像できないですから。治療を続ければいつかまた、元気な姿に戻るんじゃないか、という気持ちが出てくるのが自然だと思います。
年齢が若くて、不慮の事故などの場合は、迷うと思うんですが、もう天寿をまっとうしていると言っていいんじゃないかというお年なら、「延命はしない」と、ふだんから家族や周りの人に伝えておくのがいいんじゃないでしょうか。
いつ死んでも悔いはないという日々を送りたいなと思います。